これが、当時繰り返しテストされていたプロトミノーのうちのひとつ。重心移動型のウェイトルームが見える。
奥村和正DVD「D-plosionⅣ(ルアーマガジン)」でも池原DAY3で使用していたそのプロトミノーは、その後のテストでまずまずの釣果は得たものの、ボディ幅の薄さから内部構造の自由度が低く、重心移動やバリアブルバランサー等の設計に制約をきたしたこともあり、あえなくボツとなった。
この頃からバリソンミノーのベースとも言えるテストモデルが出来つつあったことから、いわゆる“不採用の金型”ボディは、結局日の目を見ることなく処分されるはずだった。しかしファクトリー内ではその後、このボディを使って“遊び感覚”とも言える様々な試作がおこなわれていたのだ。
この写真は、闇に消えていったテストモデルたち。ひとつとして同じセッティングはない。
左の列、ショートリップを装備したミノータイプ。中央の列はシンキングペンシルタイプ。右の列はスイッシャータイプ。
あれこれと手が加えられ遊んでいる過程で、シンキングペンシルやフェザーフックでローファイチューンが施されたものなど、本来のコンセプトとはかけ離れた多くの珍品?が生まれていた。
その流れで当然のようにスイッシャータイプも試作された訳だが、何気なくバズジェットJr.のプロップを付けたお手頃サイズのシングルスイッシャーは、サイズこそ選べないものの予想外の釣果を生むスイッシャーへと変貌を遂げたのだ。その威力はスローリトリーブによる直線的なただ巻きがもっとも効果的で、プロップから生じる振動でボディが僅かに震え、チリチリというサウンドでアピールする。
例えるなら、尾ビレを細かく震わせて水面下を泳ぐ、弱った小魚といったところ。
バズジェットJr.と異なり、ボディ自体はアクションを持たないことから、センターオフセットされたdepsプロップの効果がより際立ったといえる。
「とにかく釣れるということで入会特典用として金型作製に至ったアイテムだ(ルアーマガジン2008年2月号P191奥村コラムより抜粋)。」
これを機に金型の内部構造が一新され、長い歳月を経てついにリップルジェットとして生まれ変わることとなった。